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「視床下部幹細胞はエクソソーマルmiRNAを介して老化速度を部分的に制御する」(2017年8月に発表された論文) を読みました。

間脳視床下部による老化制御の図

脳の視床下部が老化を制御しているといった内容の論文である。

 

これまでに、視床下部は老化の制御を助けると考えられていたが、そのメカニズムは不明であった。

 

今回、著者らは、幹細胞マーカーである “Sox2”“Bmi1” を共に発現する視床下部幹/前駆細胞が除去されたマウスモデルを複数開発し、実験を行った。

 

いずれのマウスモデルにおいても、これらの視床下部細胞を大規模に失うことで、一貫して老化様の生理学的変化の促進、または寿命の短縮が見られたそうだ。

 

逆に、老化に関連した炎症性の視床下部微小環境においても生きられるように遺伝子改変した視床下部幹/前駆細胞を局所的に移植した中齢マウスでは、“老化の遅延”“寿命の延長” が起きたという驚きの結果を彼らは得ている。

 

メカニズムとしては、まだ詳細には明らかになっていないが、視床下部幹/前駆細胞から分泌されるエクソソーマルマイクロRNA (miRNA) がどうやら部分的に老化速度の制御に関与しているようだ。

 

どの種類のエクソソーマルmiRNAが老化制御に大きく関わっているかなどは、これから明らかになっていくに違いない。

 

これからの進展が非常に楽しみだ。

 

 

参考文献:Yalin Zhang et al. Hypothalamic stem cells control ageing speed partly through exosomal miRNAs. NATURE 548, 52-57 (2017).

 

 

 

【用語解説】

 

エクソソーム(Exosome)

 

→ 細胞内の小胞輸送を介して多胞体から細胞外に放出される直径50~150 nmほどの細胞外小胞の一種である。

 

内部にはタンパク質、脂質、核酸などが含まれている。

 

エクソソームは、細胞外に分泌された後、血液や尿、唾液などの体液を介して隣接もしくは離れた組織に取り込まれ、細胞間情報伝達の担い手として機能することが示唆されている。

 

 

 

・miRNA (マイクロRNA)

 

→ 20~25塩基長の微小RNAで、機能性核酸であり、他の遺伝子の発現を調節している。

 

 

 

・視床下部(Hypothalamus)

 

→ 間脳に位置し、自律機能の調節を行う総合中枢であり、交感神経・副交感神経機能および内分泌機能を全体として総合的に調節している。