以前読んだ “レスベラトロールの作用機序” に関する論文である。
若返りに興味・関心がある方は、すでにご存知かもしれないが、“レスベラトロール” は赤ワインなどに含まれているポリフェノールであり、抗老化作用があるとされている。
では、一体どのようなメカニズムによって抗老化効果を示すのだろうか、気になったので調べてみた。
タイトルにもある通り、レスベラトロールはcAMPホスホジエステラーゼ (PDE) を
阻害することによって、cAMPの量を増加させる。
cAMPの量が増えると、cAMPのエフェクタータンパク質である "Epac1" が活性化する。
Epac1が活性化すると、細胞内カルシウムの量が増加し、"ホスホリパーゼC" と "リアノジン受容体カルシウム放出チャネル" を介してCamKKβ-AMPK経路が活性化される。
結果的に、NAD+の増加とSirt1の活性化が起こる。
以前の記事で取り上げたようにSirt (サーチュイン) は、“長寿遺伝子” として知られている。
このSirt1によって、ミトコンドリア新生・呼吸を制御する "PGC-1α" が活性化されることで “寿命延長効果” が表れると考えられる。
専門用語が多数出てきたので、以下に用語の解説を簡単に載せようと思う。
参考文献:Sung-Jun Park et al. Resveratrol Ameliorates Aging-Related Metabolic Phenotypes by Inhibiting cAMP Phosphodiesterases. Cell 148, 421–433 (2012).
【用語解説】
・PDE (phosphodiesterase:ホスホジエステラーゼ)
→ cAMPやcGMPの環状リン酸ジエステルを加水分解する酵素である。
・cAMP (cyclic AMP:環状アデノシン一リン酸)
→ グルカゴンやアドレナリンなどのホルモン伝達の際に、セカンドメッセンジャーとして働く因子である。
・Epac1 (exchange factor directly activated by cAMP 1)
→ cAMPの細胞内センサーである。
・ホスホリパーゼC (phospholipase C / PLC)
→ リン酸エステル基の直前でリン脂質を切断する酵素群の総称。
・リアノジン受容体カルシウム放出チャネル (ryanodine receptor Ca2+-release channel)
→ 細胞内小器官 (小胞体や筋小胞体) からのカルシウム放出を担っている。
・CamKKβ (CamKK2:Calcium/calmodulin-dependent protein kinase kinase 2:カルシウムカルモジュリン依存性タンパク質キナーゼキナーゼ2)
→ CamKKファミリーメンバーであり、AMPKをリン酸化し、その活性を制御する酵素である。
・AMPK (AMP-activated protein kinase)
→ 細胞内のエネルギー状態を監視し、その状態に応じて糖・脂質代謝などを調節するセリン/スレオニンキナーゼである。