· 

「レスベラトロールは、cAMPホスホジエステラーゼを阻害することによって老化関連代謝表現型を回復させる」(2012年2月に発表された論文)を読みました。

レスベラトロールの作用機序の図

以前読んだ “レスベラトロールの作用機序” に関する論文である。

 

若返りに興味・関心がある方は、すでにご存知かもしれないが、“レスベラトロール” は赤ワインなどに含まれているポリフェノールであり、抗老化作用があるとされている。

 

では、一体どのようなメカニズムによって抗老化効果を示すのだろうか、気になったので調べてみた。

 

タイトルにもある通り、レスベラトロールはcAMPホスホジエステラーゼ (PDE) を

阻害することによって、cAMPの量を増加させる。

 

cAMPの量が増えると、cAMPのエフェクタータンパク質である "Epac1" が活性化する。

 

Epac1が活性化すると、細胞内カルシウムの量が増加し、"ホスホリパーゼC""リアノジン受容体カルシウム放出チャネル" を介してCamKKβ-AMPK経路が活性化される。

 

結果的に、NAD+の増加Sirt1の活性化が起こる。

 

以前の記事で取り上げたようにSirt (サーチュイン) は、“長寿遺伝子” として知られている。

 

このSirt1によって、ミトコンドリア新生・呼吸を制御する "PGC-1α" が活性化されることで “寿命延長効果” が表れると考えられる。

 

専門用語が多数出てきたので、以下に用語の解説を簡単に載せようと思う。

 

 

参考文献:Sung-Jun Park et al. Resveratrol Ameliorates Aging-Related Metabolic Phenotypes by Inhibiting cAMP Phosphodiesterases. Cell 148, 421–433 (2012).

 

 

 

 

【用語解説】

 

PDE (phosphodiesterase:ホスホジエステラーゼ)

 

→ cAMPやcGMPの環状リン酸ジエステルを加水分解する酵素である。

 

 

 

cAMP (cyclic AMP:環状アデノシン一リン酸)

 

→ グルカゴンやアドレナリンなどのホルモン伝達の際に、セカンドメッセンジャーとして働く因子である。

 

 

 

Epac1 (exchange factor directly activated by cAMP 1)

 

→ cAMPの細胞内センサーである。

 

 

 

ホスホリパーゼC (phospholipase C / PLC)

 

→ リン酸エステル基の直前でリン脂質を切断する酵素群の総称。

 

 

 

リアノジン受容体カルシウム放出チャネル (ryanodine receptor Ca2+-release channel)

 

→ 細胞内小器官 (小胞体や筋小胞体) からのカルシウム放出を担っている。

 

 

 

CamKKβ (CamKK2:Calcium/calmodulin-dependent protein kinase kinase 2:カルシウムカルモジュリン依存性タンパク質キナーゼキナーゼ2)

 

→ CamKKファミリーメンバーであり、AMPKをリン酸化し、その活性を制御する酵素である。

 

 

 

AMPK (AMP-activated protein kinase)

 

→ 細胞内のエネルギー状態を監視し、その状態に応じて糖・脂質代謝などを調節するセリン/スレオニンキナーゼである。