テロメアは、直鎖状二本鎖DNAを持つ真核生物に特徴的な構造であり、すべての染色体末端に存在している。
ヒトの場合、5'-TTAGGG-3' の繰り返し配列からなる二本鎖DNAであり、10~20キロ塩基対の平均テロメア長を有している。
このテロメアDNAは加齢に伴って短くなっていくことが知られている。
テロメアDNAの短縮が限界に近づくと "細胞老化" が誘導され、細胞増殖の停止が起こる。
老化を回避するためにはテロメアの維持が必須であり、このテロメアの維持機構は、"がん細胞" や "不死化細胞"、"幹細胞"、"iPS細胞" にも関与している。
がん細胞や不死化細胞は、テロメアを伸ばす働きを持つテロメア―ゼの活性化によって、老化を回避している。
しかし、約10%の細胞は、テロメラーゼを介さないテロメア維持機構を利用している。
また、テロメラーゼの活性化とテロメア長の維持は、細胞の初期化や、初期化された細胞の機能維持にも重要であることが知られており、樹立されたiPS細胞では、テロメアの長さがES細胞と同様の長さまでリセットされる。
この初期化に伴うテロメア―ゼの活性化は、老化を誘導する遺伝子である "p21" や "p16" の発現を抑制する。
また、テロメラーゼの活性化に重要な触媒サブユニット遺伝子 "TERT" を細胞に導入することによっても "p21" や "p16" の発現増加が抑えられることが分かっている。
テロメア長の短縮は、老化関連疾患のリスクを増加させることも分かっており、テロメアが短い人は、"心血管系冠動脈疾患" や "感染症" での死亡率が高く、寿命との相関も見られている。
このように、テロメアと老化は密接に関わっている。
参考文献:実験医学 Vol.31, No.20 (増刊), 2013, 65-71.